"平和の原点"を見つめ、この地球から核と戦争をなくしましょう。
このサイトは、埼玉県坂戸市で毎年行われる「ヒロシマ市民の描いた原爆絵画展」の記録を掲載しています。
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現地で学ぶ大切さ −アウシュヴィッツを訪ねて−

原爆絵画展坂戸・鶴ヶ島地区実行委員 武井芙由子

報告

 日本にもドイツにも「戦争」という名の下に、多くの国々を侵略し、たくさんの人々の命を奪ったという加害の歴史があります。日本では、加害の歴史に目をそむけ、過去の戦争を正当化しようという動きが強まっています。日本でのそういう動きに不安と怒りを覚えるなかで、では、ドイツは過去とどう向き合っているのか知りたいと思い、ドイツ、そしてポーランドへと足を運びました。その中で印象的だったことをいくつか報告します。

 まず、アウシュヴィッツ博物館では、ドイツ人の若者とポーランド人の若者が一緒のグループで見学していました。これは日本ではめったに見ることのできない光景だと思います。勇気ある学生たちだと思いました。これは、ドイツとポーランドは信頼関係を築いてくるなかでできるようになったことでもあるし、こういった地道な活動によっていまのドイツと周辺諸国との信頼関係が築かれてきたことでもあると思います。たとえば、日本人学生と中国人学生で抗日記念館見学や日本人学生とアメリカ人学生でヒロシマ・ナガサキへ、というようなことがあるでしょうか。私たちは直接の被害者、加害者ではないけれど、過去の歴史を語り継ぎながらそのプロセスを通じて戦争を体験していないさまざまな国や民族の若者同士が、お互いの思想様式や価値観の違いを確認することは大切だし、若い世代の私たちにしかできないことでもあります。

 ドイツでは、ベルリン・ホロコースト犠牲者追悼碑を見学しました。ナチスに殺された600万人の犠牲者のための追悼モニュメント。第二次世界大戦から60年目に当たる2005年に約40億5000万円と6年の歳月をかけてドイツ政府が完成させました。これは、「ナチスの犯罪を忘れず、若い世代に語り継いでいく」というドイツ人の決意表明で、建設された場所はベルリンでも各国大使館がある一等地と言われるところです。日本でいえば東京の青山にそのようなものが建設されるなど到底考えられないことです。

感想

 ドイツの戦後に学ぶところはたくさんありましたが、ドイツやポーランドを旅して、改めて強く感じたのは現地学習の大切さです。「百聞は一見にしかず」というのは本当で、現地に行かなければわからないことがたくさんあります。現地では、理論を抜きにして、空気や人、すべてが心に訴えかけてくるのです。本を読んで勉強することももちろん大切ですが、現地へ行くこと、現地ではありませんが、たとえば、原爆絵画展の開催にもすごく意味があると思います。そうでなければ、たとえば小林よしのり氏の『ゴーマニズム宣言』なんかにハマってしまったりする可能性は十分にあると思います。けれども、たとえば現地学習をしたり、戦争の被害者の証言をきいたりしたとき、ゴーマニズムなんて絶対に宣言できないと思うのです。

 戦後60年以上たち、日中戦争からは70年がたちます。戦争体験者も少なくなり、戦争について考える機会も少なくなっています。けれど、二度と戦争をしない、させないという思いでこれからも活動し、原爆絵画展の継続と発展に向けても力を注いでいこうと思います。